フィールドの読解に基づく建築設計手法

渡辺――
ここですね、今1時間ぐらい経ってしまったということあるんですけれども、あと、逆の2番のやつっていうものが2作品あって、ここの2個をやると、もし休みたいなら休みます。

 次、逆のやつですね。フィールドの読解をベースにして、そこにパッシブの導入を加えたようなものについてお話しします。これは実際建ってなくってプロジェクトです。土佐山田の町家ということで、私の大学(高知工科大学)近辺の町なんですがこれも頼まれてないので延々とやってるだけで、 こっちは長くて2020年からやってて。今度はフィールドごとにやってるので、どう読み解いたのかということですが、大学時代にフィールドを読解する研究室に居たこともあるんですが、そんなにすごく読解してるわけでもないです。まず、土佐山田という町が単純すぎることもありまして、都市を読む時に街道があります、町家があります、おしまい、みたいな町で、なので、もう読み終わりました。っていうことですね。なので、これ以上特に読めません。

次に、町家がどうか見ていきます。 町家ですが、よくある平入りの正面っていうものが道に面しています。それはミセで奥に母屋があって、水回りが庭に突き出していると。 そんなに珍しいものではないと思うんですが、こんなような町家で、これはかなり大型の町家の図面です。それで、面白いのはですね、この後ろにある母屋とこの水回りが付き出て、奥が庭になっているというやつは、土佐山田の多くにある農家の屋敷構えがそっくりで、要は母屋と納屋でL型を成していて、このツボって書いてある庭ですが、そのありようにかなり酷似しています。これはすごく面白いと今捉えています。屋根形式もそれを反映してか、平入りのミセ棟に対して母屋棟は違うものだよって表示せんがためなのかわかんないですけど、こっちは妻入りです。 なので、明らかにつくるのめんどくさそうなんですが、妻入りしながらミセとは違うということを表示している。この町の在り方は極めて特徴的なのではないかという風に捉えています。



次に、昨今の土佐山田の新築住居はどうなってるかというと、 ここまでするのかと思ってますが、町家跡地に建ってる住居は町家の様式って敷地によってバラバラなんですけど、 新築の部分は1番ケツまで引いてきます。なので、むっちゃ奥まで住宅がバックしていって、その手前には駐車場とアスファルトしか見えないってことになって、普通はある程度引いて駐車場を確保したら、家を配置してその奥に庭でも作るものでしょうが、なんか彼らはめちゃくちゃ引きます。なので、駐車場しかないです。ただ、これが彼らの多分欲求なんだろうなっていうことをちょっと思ったわけですね。



こういった2つの読み解きから何ができるかなんですが、 まず土佐山田の町家なんですけれども、平入のミセ棟があって、奥に妻入りの母屋があると。ただし、ほぼミセは閉じてることが多いです。それに対して現状は、家をめちゃくちゃ奥までセットバックして、駐車場があって、駐車場は道に見せてる状態。こういう時に、この両方が成り立つことできないかっていう時に、 ミセというものは道からセットバックすると意味がないので、こいつらはセットバックさせません。あと、母屋の方はこれ住まいの本拠なので、これは今の山田の方は引きたがってるから、「じゃあ引けばいいじゃない」ってことで、1番奥まで引っ張っていくと。そうなると間に庭ができます。ただし、ミセはミセを開いてないと意味がないので、もうミセを閉じるんならば、いっそのこと、ミセを抜いてしまう。そうするとミセを抜いたトンネルみたいな空間の向こうに中庭と母屋がある。 これ農家の屋敷構えみたい風情になりますから、そういうことが見えるということができるんじゃないかと。頼まれたもんじゃないので勝手にできるということがあって、こういう町家がいいんじゃないかという話をしています。これでミセが道に対してもうなくなってるので、何を道に見せてるかというと、庭だけが見えてるということで、 このプロジェクトは、別名ミセニワと呼んでいます。


こういうのが建物でこの街道から見ると、家型の部分、切妻の妻入りがなくなっていて、トンネルの向こうに斜面の庭があって、奥に切妻の部分が見えてるということで、こういったものが街道にさらけ出されてると。この庭では畑をしたりだとか、植物植えたり、好き好きやってもらったらいいので、母屋が内縁からこの庭に出れて、そこの庭でのアクティビティが見えてるということがありますので、店にシャッターを閉めて道に晒してるよりは、こっちの方がいいんじゃないかという話ですね。ということで、街道に対してトンネルみたいなのを開けて、その奥に庭があって、母屋が見えてると。あと平入りと妻入りの独特なコンビネーションをこの母屋に残して、こういう状態にしています。平面はこうなってて、1階のとこはトンネルで何してもいいところがあって、奥にミセニワと2階に母屋があるということですね。これができた模型なんですが、これがミセ棟でその奥にこの母屋のとこは2階は持ち上げていて、ここをワンルームにして、パッシブ等の要にもなるように配慮しています。道から見ると、このトンネル型の空間の奥にミセニワがあって、その奥に切妻の妻入りの母屋が見えてるということで、農家の屋敷構え的な風情が道の方に表示されるというとこに特徴があるという風に考えてます。

パッシブの導入ですが、基本先ほどと同じ仕組みなんですが、山田の場合は街道が東西に走ってるので、 家を作るときに北にいくか南にいくかの2択になります。 そのどっちでもいけるように同じ形のものなんですが、こっちで集熱する場合とこっちで集熱できる場合がどっちも成り立つように、リバーシブルになるようにはしています。これはなんか、どっちかというと補助的に山田の町屋のありようから建築を決めながらパッシブも成り立つようにしてますよってぐらいのことだと思っていただけたらと思います。地球感受の空間ですが、前面の街道から見て、庭が斜面に見えていて、奥に豪華な屋敷構えみたいなもの見えるんですが、リバーシブルパッシブが叶うために、両側大開口がついているので、ここを介して空が見えるという状況があって、これを地球感受の空間として設定しています。


もう1個、このタイプのもので、今度は子ども園の計画をしたので、これについてもできるだけ手短にお話しします。 これも頼まれてないので、2018年から始めて、まだやってるのかみたいなやつになってます。これは、大学の近辺に神母木という、𩵋谷さんはよくご存知だと思うんですが、そこのところに作った子ども園です。川に面して住居が建ち並んでいて、斜面地にもこういう風に住居が建っています。あと、川の1番下流側にですね、神母神社っていうのがあるんですが、そこに、樹齢500年を超える大楠が立ってます。ここの神母ノ木という町ですが、元々、物部川の水運で栄えた地域っていうのが1つで、もう1個は、ここの緑色につけるところですが桑畑が一面広がっていて、あと墓しかないっていうのがあって、 高原上に養蚕拠点と、あとはお墓があると。 そこに挟まれて居住地があるっていう村です。そこで、こういった地域にとって大事と思われるような3つの風景を定めました。

具体的には、ここが子供園のある敷地なんですが、ここに墓地と祠がある元桑畑なところがありまして、この物部川の下流の、ここに神社があります。さらに南には、高知市を含む香長平野というのがありまして、そこへの眺望が開けてるということで、こういったものを取り込んだ中規模の子ども園を作るという話です。それでは風景ですが、これがお墓で、高知の墓はほぼほぼ全部南を向いています。結構「この状況で、南向くの?」っていうぐらい南が大好きな人たちで、お墓は基本、南を向くというのがあります。 あと眺望で、これが500年を超える神母神社の大楠です。こういった3つの風景に呼応するような空間を園舎に導入しようという話です。


これ模型写真ですが、割と軸線とかベタなことなんですが、園舎の中の然るべきとこに大楠に反応したりだとか、 段丘の上にある南向きの土地に反応する空間を作ったり、眺望が開かれるといったことをやっています。作ったのはこういう建物なんですが、基本風景を取り込むことでどういう風に空間変わるのかってことが主眼なので、建築計画はむちゃくちゃオーソドックスなことしかしてません。 南に庭があって北に庭があるというのを組み合わせただけで、何の面白みもないようなプランニングにしています。できたものがこういうもので、こっちが北側園庭型でこっちが南園庭型ですが、そういうものを作ってるというだけなんです。ここに3つの風景に呼応するようなものを軸線含めて導入していくということをやります。


具体的に色を塗ってる箇所が墓地に呼応する空間、ここが眺望に呼応する空間で、このアプローチのここにトンネルがあるんですが、こっちを見ると楠の大木が見えるということで、こういうものを組み込んでます。何が起こるのかですが、まず墓地の方はですね、むちゃくちゃ軒が下がってるとこがあって、ここを子供が見る時にほぼ真っ暗。開けて、ここでぼうっと光ってるんですが、それによって 南を向いてる墓地を象徴させるようなことが起きたりだとか、遊戯室からのアプローチからはこの香長平野の眺望が開けたり、あとはアプローチのあるトンネルの軸線上に楠の大木があるんで、特に帰路につくときは夕暮れ時なんで、 楠の大木とこっちに暮れていく陽を眺めることができます。

パッシブなんですが、今度はですね、また同じことをやっているので、もういいですね。これで、それをどこでやってるかと、黄色のとこでやってます。日射取得ですね。ここでやっていて。 ただし、方位のずれが生じています。こんな角度ですね。なので、このままではダメなので、要は夏季の日射遮蔽ができませんから、外側に袖壁を設けることで、東西方向の日射というものは射蔽できるように、そこだけは新たなことをしています。


地球感受の空間ですが、エントランスのとこが実はすごい塔屋がありまして、これ緯度勾配で上がっている北向きの塔屋で、北極星を向いてこういう風に空が開けてるんですが、それと、ここに宙知の間で導入したやはり線形トップライトがありまして、 これが当然正午はこう、ここにどばっとこう光が落ちるんですが、ちょっと変則ながら、これ、くるっと回転するようになってます。要は、園児が朝来たら、まず、土間でこういう塔のあるとこに入っていって、そこからあちこちに去っていくということですね。こういった場所を、 園児が来るところと下駄箱があるので帰りに、ここにやってくるということで、朝来る時と帰る時に、地球感受の空間で過ごすということになります。空間ですが模型写真で恐縮ですが、このここは低く下がった時で、この暗がりを通してこの墓地と呼応してるのと、このトンネルがこの楠の大木と呼応してて、こちらが眺望の開ける場所です。これも逆から見たような写真ですね。ここの袖壁付きの大開口で、眺望を見るという形です。こういう建物で、開口はこういう風になってて、これが楠の大木を見るトンネル空間です。これが地球感受の空間で、緯度勾配で北を向いて飛び上がる塔屋です。これは遊戯室ですね。ここから眺望が開けます。ここに保育室があるということで、北側の園庭のある保育室です。


この回り込んだアプローチで一旦こういう中核に達して遠心するというのは、フランク・ロイド・ライトの回り込んで求心するというアプローチ、そこから遠心するというその技法を参照してこの保育園に取り組んでいるという話があります。求心と遠心のその中核にあるところに地球感受の空間を据えることで、一旦集まってくるところが大地と天が繋がってそれを見て去っていくということで、 そういうところを、暖炉じゃなくて、ライトの場合暖炉なんですが、暖炉じゃなくて地球感受の空間を求心と遠心の要に配置しているということがあります。ちなみにここって今模型の都合で閉じてますが、本当はこれ暗い空間がここにあって、墓地呼応空間がこの下にあります。なので、園児が朝来ると北の空を眺めるとここに暗い空間あって、何か怖いなっていう感じを思いながら各自の部屋に向かいます。


ということで、ここぐらいのところで、今だいぶちょっと経っちゃってるんですが、まず パッシブ側でフィールドを補助的に導入した話と、 フィールド側にパッシブを導入したような作品について、計4つ紹介しました。この天翔ける方舟はちょっと位相の違うもので、建築構法の編成に基づいて作り上げたものになります。これとこの後に祈る空間が続いていくんですが、切れ目的にこの辺りは一旦ちょっと休憩してもいいのかと思うんですけど、どうでしょうか。

𩵋谷――
そうしましょうか。はい。充実の内容なんでもっと早く聞きたいっていう気持ちと、あまりにもヘビーすぎて体が持たなそうなので、10分ぐらいじゃあ休憩して、5時半から。

渡辺――
すいません、ちょっとヘビーで申し訳ないですが。10分前までご参上いただければ幸いです。どうもありがとうございました。

森田――
じゃあ、いったん休憩にして、5時半にまた始めましょう。