パッシブシステムの導入にもとづく建築設計手法

渡辺――
論文の対象としているものは10個の建築作品のプロジェクトでして、大きく2つの手法に分けています。パッシブシステムの導入に基づくものは以下の4つあります。

先ほど「いる」というものを漢字の「居る」と「祈る」という風に分けていましたが、ここにおける建築は全て漢字の「居る」方に当たるものになります。もう1つフィールドの読解にもとづいて作っている建築で、そのうち漢字の「居る」方なんですが、それは以下の4つになりまして、 これに加えて「祈る」空間というものも2つ手がけていますので、こういったものについてもお話していこうという風に考えています。ここからはですね、具体的な作品を通じての地域−地球型建築の設計手法について見ていこうという風に考えています。ここがしんどかったら、単に僕の建築がしんどいだけなので、ちょっとそうならないことを願っています。

まずは「居る」と「祈る」に分別した時にこの水平世界で安らいでいるこの漢字の「居る」空間についての設計手法について示していこうと思います。これは大きく3つありまして、1と2は対になっているんですが、まずはどっちを下にするかですね。パッシブを導入することを主にしていて、そこにフィールド読解を補助的に重ねながらっていうものが1番目で、2個目はその逆です。フィールドを読解することで作るものをベースに、そこにバッシブを導入するというもの。 3つはちょっと位相が違っていて、要は建築の設計に当たる形を決めるだとか、コンセプトを決めるとかっていう中で、 具体的なものに与える構法に関して、その編成に基づいてつくり上げる話で、ちょっとカテゴリーが違うかと思います。



まず1番目で、パッシブを主体にしてそこにフィールドが重ねるものについて見ていきたいと思います。これは奈良県にある宙地の間と言うんですが、日時計のあるパッシブハウスです。これについて見ていきたいと思います。主題が日時計のあるパッシブハウスということで、こういった主題はどういう風にまず原型モデル化できるのかってことです。AからDの4段階で成り立つという風に考えていまして、鬱陶しいかもしれませんが説明します。まずはパッシブハウスとして、完全にワンルームで断面大開口があるというパッシブに特化しての器が仮にあるとします。それに対してBは日時計のあるパッシブハウスだから、日時計のみを取り出していて、赤道型日時計が単にあるということです。Cに関しては、Aの空間にBをぶち込んだもので、こうすることでですね、南面だけ空いているような開口で、のぺっとした空間だったものに日時計が入ることで、その東西南北に明るい暗い、広い狭いみたいなことの空間的な質の差が出てきます。Cはただ屋根を外してて、Dでは屋根を塞いでます。ここで日時計の時を示すのは影じゃなくて、光になるようにトップライトを設けているということで、Dになってようやく宙地の器というものが出来上がるということになります。

こういった原型モデルを基に作り上げた宙地の間のある実施建築の模型です。 パッシブによくあるような、南大開口を備えていて、その2階の北側に日時計が浮かんでいるというものです。まず、パッシブを主体していますので、その導入について簡単に説明します。非常に平凡なことしかしていません。先ほど示した夏季と冬季で、こういうパッシブハウスの日本の四季ある地域で最も典型的な技術を取り入れているものになります。平面で見ると、南面大開口に面してワンルームを設けていてるのが1階ですね。そこで集熱するんですが、冬季の話です。2階はその上部に吹き抜けが設けられて、熱の通り道になって2階の個室にそれを導くという典型的なパッシブハウスのプランニングかと思います。断面ですが、南面が庇でもって夏季の日射遮蔽をして、冬季は南面大開口によって日射を取得をするという、これまたパッシブハウスにおなじみの断面構成かと思います。


こういったもので作った空間を簡単に紹介しますと、外観ですが、南面に関しては基本的には南面大開口が備わっていて、 それに対して北側っていうのは通風用の窓しか開いてなくて、屋根だけのような建物になっています。 この中に日時計が内蔵されていまして、右の写真のように冬季になると天井の方にも光線が当たるんですが、光線の軌跡によって時を刻むというもので、こういったものが2階北の奥に浮かんでいます。日時計は何がわかるのかというと、一日の時間、午前8時から16時までってのは左の図で、 光線の回転によって時間が分かります。もう1つは、光線が日時計のこのボールトのどのポジションに当たっているか、夏になると下に移動してきて、冬になるほど上がっていきます。ということで、日時計によって1日の時間変化と四季の変化というものを読み取ることができます。日時計の前にできている空間ですが、南側は南面大開口に起因する明るくて、温かな居間があるということで、陽の間と呼んでいます。

2階の日時計の東西には2つの個室があるんですが、日時計に光が差す時間帯が普通の方と逆転するので、夕の間、朝の間というものがあります。日時計の北側がこれ特殊でして、土間の空間、ここはフローリングもしてなくて、土間だけがあって、その上に日時計の裏が浮かんでいると、これを影の間と呼んでいます。なので、日時計を中心にして特徴的な4つの空間があるんですが、基本的には家族がですね、それぞれ好きに思うところを選び取って、それを部屋にしているような状況になっています。



こういったものが、パッシブのことを主体にしてどういう空間ができたのかって話を示していきました。どういう風にフィールドを読んだのかってことですが、これ、本当に補助的にとどまっています。そのことについて簡単に説明しますね。宙地の間のあるところですが、奈良県の生駒郡というところでして、基本的には新興住宅地が斜面地に多いところなんです。春日丘という斜面地住宅部とその上の西宮というちっちゃな斜面地住宅群があって、宙地の間の敷地というのは、この2つの住宅地ができた時からずっと、どちらにも属さないポカッと空いたような土地でした。そういったことに応答するあり方として、西宮と春日丘、共に東向きの雛壇にありますから、東向き正面の家が多いんですけれども、宙地の間に関しては、元々日時計があることもあるんですが、真南を向くことで全然違った方位性を持たすことで、どちらにも属さないということを表示しています。これはこの風景で基本的に雛壇に乗っ取りながら、各家が建っている中でど真ん中にあるこいつだけどこ向いているかよくわかんないような状態になっているんですが、これは真南を向いていて、ある種、都市の中の方位性と違ったモスクのようなものじゃないかと捉えています。

もう1つはですね、これありきたりのことなんですが、この土地からどんな空気が楽しめるのかっていう時に、 東だけが唯一関係を持ちたいと思えるような、矢田丘陵への良好な眺望が開けています。実は近所の人の散歩コースの中で、この空地を介して矢田丘陵をみるのが皆さん好きだったので、そこに家が建つっていうことは、マイナスを引き起こすんですが、どうにかそれができるようにってことは考えました。具体的には、完全にオープン外構にするということと東の緑色に塗った法面は空き地にすることで、建物が視線を遮るようなことを基本的にやめています。そういった状態の外構の写真はこれで、この面にあるものが空地にしてるもので、草刈った直後だからこうなんですが、ほっとくとえらいことになっていきます。そういった場所があって、あとはオープン外構ということですね。ただし、このことによって、近所の人は矢田丘陵が見えるんですが、せっかくここに居を定めた家族はもう少し特殊な状況で矢田丘陵を見れる方がいいということがあります。倉庫棟の額縁を介して、矢田丘陵とその上に雲が流れる空を眺められるように、その風景を感受する質を高めているということをやっています。



最後にですね、この地域−地球型建築としては地球感受の空間というものが必要になってくるんです。宙地の間において何かということなんですが、 地球感受の空間は、ランドアートとかアースワークなどの表現技法、あるいは天体観測装置であるコズミックアーキテクチャーというものが地球感受といったことを象徴しやすいです。宙地の間においては、先ほど出てきていた赤道型日時計、コズミックアーキテクチャーを導入することで、天を受け取る装置は生まれたということがあります。 ただし、このままだと天しかないので、大地はどこ行ったんだってなりますよね。その時に、北にあるもう土間しかないところに、ある種象徴ですが、大地性をここに残しておいて、 そこからポカッと浮かぶ日時計を見ることで、大地と空を巡る太陽をつなぐ場として地球感受の空間としています。ここまでが宙地の間です。



同じような方向性の建物で、今施工中のゲンダイタテアナという建物があって、1つだけだとその有り様はちょっと分かりにくいので、宙地の間と合わせて紹介することで、この手のものがどういうこと考えているのかっていうことを見ていただけたらという風に思います。これは竪穴式住居をぶった切ったような空間があるとしまして、それを内庭に変えてしまって、その周囲に住むと。何言っているかわからないので、説明を加えていきます。

先ほどの宙地の間と同じように、ゲンダイタテアナというものの構成原理モデルというのを定めました。AからDの順番になります。かなり抽象化していますが、Aが竪穴式住居と思ってください。要は正方形平面で円錐型か、この場合角錐ですが。あと、天窓と煙ぬきがあるということで、完全なワンルームで求心体である。あと、天と地が繋がっているということが竪穴式住居の生命線だという風に思っています。その時にBは何をしているかというと、南から集熱したいというパッシブにありがちなことをしますね。となると、Aの南をぶさっと切ってしまうと。 こうなると、南からの日はむちゃくちゃ入るんですが、Aが持っていた質はもう台無しになります。もう竪穴でもなんでもないってなりますね。 ただし、Bなことをするならば、一旦Bに付き合っていくということで、Cは南の太陽を受け取ることをより強化するということで、扇を広げたような形にしながら、それとバランスをとるために北の空を見るような、煙抜きをこう北にひん曲げていってちょんまげみたいにしているんですが、そういう状況を作る。このCはBをさらにデフォルメしたものなので、単によくわからない太陽だけに反応している空間でしかないんですが、このCを庭にしてしまって、この周辺に日常的な機能を収めた部屋が取り巻くというのがゲンダイタテアナだと考えています。


こんなモデルだとどんな建物なのかよくわからないんで、これを元に作ったものを紹介すると、元々私の場合は頼まれて設計することがほぼないので、勝手に設計してしまいます。なので、左の方は北緯35度。西脇市って、単に北緯35度ってだけで選んでるだけで、 それで、 ゲンダイタテアナの原型というのをまず作ってみました。これを作ってたらですね、すごくラッキーなことに、これいいじゃないかっていう人がいたので、建てることになりまして、磐田市にたまたまなりました。なので、実施計画は磐田市で34.72度のところにたっていると。

これって形がちょっと変わっていますが、西脇市が「住宅の省エネルギー基準」の5地区で磐田は7地区っていうことで、 磐田のは日射遮蔽を強化しているようなこととかで、こういう形になっています。こういったことのパッシブシステムの導入ですが、基本やっていることは宙地の間と一緒で、めちゃくちゃベーシカルなことしかしていません。 ていうことで、また「この図かよ」っていうことですが、これを取り入れていって、もう割愛しますね。この平面がこれ大事で、どこでそれをやっているかですが、先言ったウチニワがここの集熱とか通風経路の要になっている。ただその名前(=ウチニワ)だけつけてんじゃないのって思うかもしれませんが、ここはですね、本当に土間の空間で、かつ照明を入れていません。なので、内側なのですが、夜になると真っ暗になります。ということで、パッシブの要を担うんだけれども、朝からちょっとずつ日の光で明るくなって、夕方にはちょっとずつ暗くなって、最後真っ暗けになるみたいな庭として作ってます。なので、パッシブとしてはガンガンに働いてくれるんですが、居間じゃなくって庭ということです。あと7地区にあるので、8月中旬の日射を遮蔽できるように軒を出しているから、2300ぐらい軒が出てるというようなことになっています。



その空間なんですが、1/50の模型で紹介します。今工事中なんで、ちょっとまだ空間できてないんですけれども。ウチニワというものはこういう形であってここら辺ですね。その周囲に日常的な個室だとか居間だとか便所だとかそんなものがあるんですが、中央には庭しかないという状態があります、逆に、その周辺ですが、居間ではこういう角錐がぶち刺さっていて、ここの建具は実際つけないので、庭の方が光っていたら、居間は当然電気があるんですが、内の方の庭を見るとそこが一段下がっていて光っていたり、ちょっとずつ暗くなったりとすることを見て過ごします。 2階とかはこういう風に角錐の上の方が刺さってきていますので、常になんか中央にあるウチニワを感じながら過ごす場ができるということになります。


ここで導入したフィールドの読解はまだ補助的なんですが、大したことはしていません。 磐田市で施主さんが選んだ土地がこういうとこで、南向きの新興住宅地で、結構この土地が大きくてですね、南北に深くなっています。こういう時に何が起こるかですが、左上の図のように、北側の道路を前面道路とする家でもですね、南側に庭を取れるんですね。ただし、その南には向かいの家のですね、お尻がめっちゃ迫ってきていて、そっちが窓が開いたりするから、お見合いが嫌なので、すごい植栽分厚く植えてですね、薄暗くなるということがあります。現代竪穴の場合は家の中に内庭があるので、別に見られてもなんでもへっちゃらなところなので、この目隠しがいらないんですよね。なので、ここに樹木とか植えずに、単に何もないところにしておくことで、周りの薄暗いところの中で共有の光庭ができるという風に考えています。あと、地球感受の空間ですね。言うまでもなく、ここの内庭の空間で、ここは土間床であるだけじゃなくって、南にはバカっとこう開かれた南面大開口があるんですが、それを対照的に北は絞り込まれて、北極星の方を向いている、通風口を兼ねているんですけれども、そういった空がありますが、南と北の対照的な空を受け止める大地があって、ここは地球感受の空間になっているということになります。